Commelina communis L. var. hortensis Makino

オオボウシバナ


オオボウシバナはツユクサの栽培変種です。その花弁は2倍近くの大きさで、花弁からとった青汁は青花紙として近江地方の特産品です。 

青花紙は、あおばな(オオボウシバナ)の色素を封じ込めた紙です。 あおばなの花びらを1枚ずつ摘み、そのしぼり汁を和紙に塗りつけます。 乾いては塗る作業を何十回も繰り返してつくられたものです。

 
 1.オオボウシバナ

  2..草津 あおばな紙


青花紙にしみこませたツユクサの青色色素は、手描友禅の下絵用の絵具としてきわめて有効に用いられてきました。 青花紙の色素によって書かれた下絵は水を吹き付けるだけで容易に消失する特徴があり手描き友禅には欠かせないものとされています。

この青花紙を小さく切って、水に溶かして染料として利用します。
友禅染のまねをして下絵を描いてみました。 驚いたことにまったくにじむことなく極細い線が描けます。


  3.ほんの少しの水に溶かした染料

  4.下絵を描く


そして青花紙のこの青色は、水に濡れただけで一瞬にして跡形もなく消えてしまいます。 

染料なのに消えてしまうところを逆転の発想で、友禅の下絵具として利用するアイデアが生まれたそうです。 つまり消えてしまう弱点を最高の特徴にして創り出した素晴らしい染料がこの青花紙です。 この特徴は化学染料では到底まねができないそうです。



このオオボウシバナの起源は、Net情報では中国原産と書かれているページがあります。 またこのように巨大化しているためでしょうか、ツユクサの4倍体だと書かれていたりもします。
しかしオオボウシバナの起源について、「アオバナと青花紙」(坂本.落合1998)には近江地方にいくつか伝わっている民話が『すべて滋賀県草津市木ノ川が舞台になっており、このあたりでアオバナが創出されたことを暗示している』と書かれています。



 
 


また染色体数に関しては、「琵琶湖周辺に存在する伝統的有用植物(その1)オオボウシバナの開花について」(木島・井上・田村 1988)の中に『真島等(1954,1955,1956)がツユクサと比較しており、染色体数はツユクサの方が多いことを明らかにしている』と書かれていますので、染色体数を調べてみました。

 


やはりオオボウシバナの染色体数は 2n=46 でした。 

したがってオオボウシバナはツユクサ(2n=44,46、88,90)の4倍体ではなく、ケツユクサ(2n=44,46)と同じ2倍体だということになります。 そして2n=46ですが、中国からはこの染色体数をもったツユクサは今までに報告がなく日本特有のツユクサだそうです(藤島 2010)。
これらから考えてみますと、オオボウシバナはどうやら中国起源ではなく青花の色素を採るために日本で創られたすばらしい品種だと思われてきます。




変わったオオボウシバナの花を見つけました。 普通下の花弁は、小さくて透明で目立たないのですが、この花の下の花弁は大きく発達して広がり、青い色がついていました。

 



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